人には、特定の文字列を表示できるフォントの一覧を出力したくなるときがあります。
この記事は、語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2022の12日目の記事です。
11月某日、Discordで「ə」にCOMBINING VERTICAL LINE BELOW(U+0329)を合成する機会がありました。しかしフォントがこの組み合わせに未対応だったようで、表示が崩れる憂き目に遭うことになりました。
(画像はgg sans採用前です。gg sansは「ŋ」との組み合わせにも対応していない(12月4日未明現在)ようで、表示はより崩れることになりました。悲しい)
(その後どこかのタイミングで対応したようです。よかったね)(2023-12-27 追記)
普段なら放置するところですが、この日はなぜか気が向いたので、Font Book*でカスタム文字列に上の文字列を設定して、正しい表示ができているかどうか虱潰しに調べて行きました。結果、写真にある「Koruri」を含むいくつかのフォントが対応していることがわかりました。
* macOSのフォントマネージャであり、インストールされているフォントを一覧することができます。この作業をした当時(macOS Monterey)では次のような見た目でした:
この作業を簡単にするために、プログラムを組むことにしました。
そうして出来上がったものがこちらです。
→yatabashi/font_availability_checker
端末にインストールされているフォントのうちから、指定した文字列を表示可能なもの(文字列の全ての文字を収録するもの)の一覧を出力するプログラムです。オプションとして、いくつかの条件が設定可能です:
例えば、次のコマンドを実行したときのことを考えます:fontac -p 'հայերեն'
これは、
ものです。このとき、次のような処理が行われます:
D_a
を生成するD
を生成するD
に追加するD
をD_a
に付け加えるD_a
を出力するset
オブジェクトに対して、要素を一つ追加したい場合は.add()
を、複数追加したい場合は.update()
を用いる。str.endswith()
にはタプルを渡して、その中のいずれかに一致するかどうかを返させることもできる。os.path.abspath()
: 自動的に相対パスを絶対パスに変換することができる。os.path.expanduser()
: ホームディレクトリの略記を自動的に展開することができる。logging.disable()
: 基準以下の重要度のログの出力を抑制することができる。tqdm.tqdm()
: 実行中のfor文の進捗を可視化することができる。簡単。すごい。sys.platform
: コードを実行中のOSを判定することができる。fontTools.ttLib.TTFont()
: フォントファイルを解析することができる。参考:
setuptools.setup
モジュールを利用することで(macOSのターミナルから利用できる)CLIツールにできる。argparse
モジュールを利用することで、sys.argv
で扱えるのよりも複雑な構造のコマンドライン引数を利用できる。argparse.ArgumentParser().add_mutually_exclusive_group()
を用いると、排他的な複数のオプションを設定できる。参考:
cmap
なるテーブルを持ち、文字コードとフォントの持つ各文字を対応付けている。よってcmap
を解析することで、そのフォントが対応している文字を文字コードとして取得することができる。name
なるテーブルも持つ。フォント名は、著作権表示やフォントの説明などとともに、ここに格納されている。/System/Library/Fonts/
: 既定のシステムフォント/System/Library/AssetsV2/com_apple_MobileAsset_Font7/
: 必要に応じてダウンロードされたシステムフォント/Library/Fonts/
: サードパーティ製アプリケーションの規定フォント~/Library/Fonts/
: ユーザが追加したフォント/System/Library/PrivateFrameworks/FontServices.framework/Versions/A/Resources/Fonts/ApplicationSupport/
: 特定のフォントを指定しているファイルやアプリケーションに対応するためにダウンロード可能なフォント(以前のmacOSに組み込まれていたフォントを含む)/System/Library/PrivateFrameworks/FontServices.framework/Versions/A/Resources/Fonts/Subsets/
: ダウンロード可能なフォント?(詳細不明)C:\Windows\Fonts
: 全ユーザ共用%USERPROFILE%\AppData\Local\Microsoft\Windows\Fonts
: 個人用参考:
git commit --amend
git stash
git diff [commit]..[commit]
参考:
今回のプログラムは、例えば国際音声記号(IPA)を完璧に表示できるフォントをパソコンにインストールされた中から検索するのには役立ちます。そのようなフォントを入手したい場合は、サークル・ヒュアリニオス(ざぎん氏)によりC92で発行された『国際音声記号フォント見本帖』が有用です(筆者はC100で入手)。
ところで、これは「語学・言語学・言語創作」の記事なんですか……?